「ムンバイは矛盾うずまく愛すべき街」、レゲエアクトBombay Bassmentへインタビュー
インドの大都市の中でも、ムンバイには他の都市にない色気が漂っている。それは強烈に相反する様々な要素が不思議と共存しているからかもしれない。
うんざりするほどの暑さや喧騒が街を支配する一方で、夜になると海沿いのマリーン・ドライブには街灯が一斉に灯り、静かな夜景が広がる。
紀元前まで遡ることができる歴史がありつつも、インド1の金融センターやエンタメの中心地ボリウッドなどを抱えている。
アジア最大といわれる貧困街で水も電気もない生活を送る人たちがいる一方で、大富豪が27階建ての豪華な「自宅」ビルを打ち立てる。
長く時間を過ごせば嫌なこともたくさんあるが、一度離れるとあの刺激が忘れられずに、また戻りたくなってしまう。ムンバイにはそんな魅力がある。
当然ながら、この街の魅力に取り憑かれているインド人も多い。今回インタビューしたレゲエ・ヒップホップ・ファンク・バンド「Bombay Bassment」は、楽曲を通じてムンバイへの愛着を表現している。
2014年にデビューした4人組の彼らは、すでにインドのシーンを代表するアーティストだ。6月にはイギリスで開かれるグラストンベリー・フェスティバルへの出演も決まっている。
また6月1日にリリースしたセカンドアルバム「X FUNC VIP」は、生楽器が中心だったファーストアルバムから一転して、エレクトロニカのサウンドを多分に盛り込んだ作品になったことで、インドのリスナーたちを驚かせた。
精力的に活動を続ける彼ら。今回はボーカルのBob Omuloに話を聞いた。
ファーストアルバム「Bombay Bassment」
セカンドアルバム「X FUNC VIP」
——Bombay BassmentはもともとドラムのLevinとベースのRuellの2人で結成し、その後あなたとDJのChanduが加入したと聞いています。バンドが今の形になった経緯について、もう少し詳しく教えてください。
Bob Omulo(BO):LevinとRuellは、もともとドラムとベースだけのグループとしてこのバンドを作ったんだ。だけどさらにサウンドの要素を加えていく必要性を感じていた。だからLevinが当時の仲間に助けを求めた。その仲間がLevinを僕と(ムンバイで活動するヒップホップアーティストの)Major Cに引き合わせてくれたんだ。それが5年前のことだ。僕とMajor Cは、彼らのサウンドにDJの要素やレゲエ、ヒップホップを持ち込んだ。僕らは(ムンバイ郊外の)アンドヘリにあるジャムルームで初めてセッションしたんだけど、すぐに意気投合したよ。僕らの一番有名なトラック「Hiphop (Never Be The Same)はこの日に作ったんだ。
・「Hiphop (Never Be The Same)」(アルバム「Bombay Bassment」ver)
・「Hiphop (Never Be The Same)」(アルバム「X FUNC VIP」ver)
——あなたたちはムンバイを拠点に長らく活動していて、この街への愛着を楽曲で表現しています。ムンバイのどんな点を魅力に感じますか?
BO:ボンベイは矛盾する物事が混ぜ合わさった魅力的な街だ。かの有名なカオスや交通渋滞、貧困、密集する人々が渦巻く一方で、アーティスティックな一面や色、祭り、海、モンスーン、ロマンス、ダダールにあるスパイス、楽隊の列が鳴らすドラムの音、あらゆる料理を楽しめるレストランの数々。愛すべきものがたくさんある。日々の不満なんてかき消されるよ。
——つい先日リリースしたアルバム「X FUNC VIP」は、プロデューサーにエレクトロニックミュージックのRandolph Correiaを迎えたことで、生楽器が中心だったファーストアルバムとは大きく様変わりしつつも、素晴らしい作品でした。サウンドの方向性を大きく変えることにためらいはありましたか?オーディエンスの反応はどうだったでしょうか?
BO:もちろんこのアルバムを出すにはためらいがあった。だから制作してから2年間もリリースせずにためていたんだ。だけど才能豊かなRandolphとの作品には、強力な何かがあるということは分かっていた。それとオーディエンスの反応には圧倒されたよ。(現在アルバムのツアーの最中だが)、もっと多くの会場や都市でのライブを予定しているところだ。オーディエンスからのリアクションについては、すごく楽観的にとらえてるよ。
——Bombay Bassmentは、過去5年間ムンバイを拠点に活動してきました。この街のインディーミュージックシーンはどう変化してきましたか?
BO:多くのバンドが実験的なサウンドに取り組んできたと思う。特にエレクトロニックミュージックにおいて、たくさんの新しいサウンドが出てきた。またヒップホップも盛り上がってきている。それはボリウッド音楽がヒップホップを取り込み始めていることからも見て取れる。それに音楽の会場が増え続けていることは、すごく喜ばしいよ。未来はとても明るい。またイベントのオーガナイザーは、アーティストたちを以前よりもリスペクトするようにもなってきた。インディーアーティストにとってこんなに嬉しいことはないんじゃないかな。さらに付け加えると、インディーミュージックに特化した音楽チャンネルが登場してきている。5年前には想像もできなかったことだ。
——ムンバイには魅力的なライブハウスがたくさんあると思います。いくつかオススメを教えてもらえますか?
BO:僕らは通常アーティストを会場に紹介することはあっても、その逆はあまりないんだけどね。。。まずAnti Socialは、他の店のようにディナーを求める人やクラバーに向けた場所ではなく、ライブアクトとリスナーのために作られた刺激的な箱だ。今多くのアーティストが演奏したがる会場だろうね。あとblue Frogはあいかわらずの定番。Hard Rockは少しトリッキーな店で、いつも観客で埋まっているというわけじゃないんだけど、キャリアの浅いバンドにとっては小さかったり無名な会場で演奏することも大事だと思うよ。大きな会場多くの人の前で演奏するためには、まず1人か2人のファンを熱狂させるところから始めないといけないんだ。
——グラストンベリー・フェスティバルへの出演が決まるというビッグニュースが入ってきました。どう感じられましたか?
BO:まだ信じられないよ。心持ちとしては、まだ僕らは国内のローカルフェスをまわり尽くしたいと思っているムンバイのバンドなんだから。だけど物事が予想通りに進むなんて思っていないよ!すごく興奮しているんだけど、それに流されないようにしているんだ。
■Bombay Bassment
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