インドのクラウドファンディング先進事例、寄付だけで運営の人気オルタナフェス
「入場料は払いたい人が払えばいい。払う場合でもあなたが払いたいと思った分だけ払ってね」という「Pay What You Want」方式と、クラウドファンディングで集めた資金によって運営されているオルタナロックイベントがある。
その心は、スポンサーやプロモーターからの資金提供を受けずにイベントを開くこと。スポンサーからお金を受け取ることで、ビジネス的な縛りが発生することを嫌った音楽関係者が、5年前に立ち上げた。
「Control ALT Delete」というこのイベントのミッションは、インドにおいて質の高いインディーミュージックを広めること。主催者側は、利益は出なくても良いとまで公言している。
イベントによるマネタイズが難しいインドにおいて、なんとも危なっかしく見えるけれども、うまく回っているよう。イベントはすでに9回開催されており、毎回数多くの人気アーティストたちが出演している。
インドでこの手の音楽を聴きに来る人たちは、所得の比較的高いホワイトワーカーが多い印象なので、お金も意外と集まるのかもしれない。
なによりもイベントの理念に共感するアーティストやファンがそれだけいるということだろう。
今回はControl ALT Delete(CAD)について、主要メンバーの一人、Rishu Singhさんにいろいろと話を聞いてみました。Singhさんは、ennui.BOMBというインディーレーベルを立ち上げた方。CADには立ち上げ直後に加入しています。
――Control ALT Delete(CAD)ができた経緯を教えてください。
Rishu:CADができた5年前は、インドのインディーミュージックシーンはまだ本当に小さいものだった。僕たちはみんな音楽業界で仕事をしている人間ばかりなんだけど、(CAD創業者の)Himanshuは既存の業界の文化を壊したかったんだ。スポンサーの意向で物事が進んでいく状況は、とてもフラストレーションが溜まるものだったからね。リスナーとアーティストに再び力を与える。それがこのイベントができたきっかけなんだ。
――そのための手段がクラウドファンディングによる資金調達ということですね。しかしCADができた当時はクラウドファンディングのサービスは今より少なかったですし、当然人々の中で馴染みもありません。今のように成功するという見込みはあったのですか?
Rishu:CADができた当初は、会場を訪れた観客が好きな額を払う「Pay What You Want」方式だったんだ。当時のインドのインディーミュージック界隈ではすごくユニークな手法だね。これでうまく人々の関心を集めることができたし、CADに協力したいという人が多くなったんだ。僕が加入した時には、もっと不特定多数の人たちからの寄付を集める方向を模索しているところだった。だからそのための手段として、クラウドファンディングはとても妥当な選択肢だった。実際に始めてみると、反応はすごかったよ。このイベントによる利益はあまり気にしていないんだ。一番の目的はこのムーブメントをできる限り広めることだからね。今ではインド国外からも寄付が集まっている。「自分たちのシーン」における僕らの信念は正しいんだって心強くなるね。
――入場料やクラウドファンディングでの資金集めの難易度は、立ち上げ当初と比べていかがですか?差し支えなければ、平均的な寄付の金額も教えてください。
Rishu:イベントを重ねるごとに、支援額は増えていったね。より多くの人たちがCADについて関心を持ってくれた結果だよ。中にはクレジットカードや銀行口座を持っていないようなキッズやシニアの人たちまでいた。こんなに熱烈なサポートがあるなんて本当にうれしいよ!寄付の額だけど、入場時が約350ルピー(約600円)、ネットでのクラウドファンディングが約500ルピー(約850円)くらいかな。
――2014年にはCADのメタル版ができました。なぜメタルに特化したのですか?
Rishu:CADのミッションは、インディーロックやエレクトロポップ、メタルといったインデペンデントミュージックを支援することなんだけど、中でもメタルはまだ一般の人たちからのサポートがほとんどないニッチなジャンルなんだ。ほとんどのライブは、このジャンルに愛着があるアーティストやプロモーター達がDIY的に実施しているものばかりだね。そういった人たちとCADとの相性は絶対に良いはずだと思ったし、実際に会場はオーディエンスで満員だったよ!
――最後に、Rishuさんが考える理想のシーンについて教えてください。
Rishu:アーティストと会場、オーディエンスが主役になった自立したエコシステムが出来れば良いと思う。費用が効率が良くて、誰もが得する素晴らしいコンサートに向けて、この三者が動く感じかな。スポンサーや企業ブランドも重要かもしれないけど、その場合は話がお金の方向に行き過ぎないように、うまくコントロールできるマネージャーが不可欠だろうね。僕らに必要なのはハートなんだ。
■直近(第9回)のCAD出演アーティスト一覧
・Bandcamp(Peter Cat Recording co.)
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・The Broadway Addicts
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・Punk On Toast
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・As We Keep Searching
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