デジタルネイティブ世代のインド人が放つインディーフォーク
EDMを中心に盛り上がるインドのインディーミュージックシーンの中で、フォークソングは少し肩身の狭いジャンルかもしれない。
けれどもそれは優れたアーティストがいないということではない。
今年のSXSW 2016への出演が決まっているPrateek Kuhadや、バークリー音楽大学出身でアメリカを中心に活動するZoyaなど、ギター一本で独自の世界観を歌い上げるインド人シンガーソングライターは存在する。
今回インタビューしたデリー出身のShantanu Pandit(シャンタヌ・パンディット)もその一人。
現在23歳の彼は、これまでソロアーティストとして活動。ローリングストーン誌のような主要メディアで取り上げられるなど人気を博してきた。
静謐でありつつも感情のこもったボーカルが独特だ。
デビューEP「Skunk in the Cellar」に収録の「The Climb」
ボブ・ディランをはじめ、1960年代のアメリカのフォークミュージシャンの影響を受けたというシャンタヌ。ギターの演奏はすべてYouTubeで見つけた音楽を通して学んだという。
そんな彼に、「もしインターネットがなかったらミュージシャンになっていたと思う?」と聞いてみると、こんな答えが返ってきた。
「それはないね。インターネットは僕のインスピレーションの源なんだ。これまで聴いてきた音楽はすべてネットで見つけてきた。ネットがなければ、僕のソングライティングを形作った音楽と出会うことはなかったはずだよ」。
ネットの普及によって、欧米のポピュラーミュージックを吸収しながら急速に発展しているインドのシーンらしいアーティストだと思った。
シャンタヌは、ソロ活動と同時に「Run It’s the Kid」というバンドも組んでいる。2月29日にファーストアルバムをリリースし、現地シーンで話題になっている。
人気アーティストとしての地位を築き始めている彼に話を聞いた。
——あなたは十代でミュージシャンとしての活動を始めました。音楽を始めたきっかけを教えてください。
シャンタヌ:16歳でギターを始めて、17歳の時に最初の歌を書いたんだ。歌を作っている最中に、これまで味わったことがないくらい力がみなぎるのを感じた。これこそ自分のやりたいことだと分かったんだ。その後すぐにデリー周辺のオープンマイクナイトに応募して演奏した。そこから徐々に有料のギグもできるようになった。その頃影響を受けていたミュージシャンは、ボブ・ディランや、1960年代のグリニッジ・ヴィレッジのフォークシーンのアーティストあたりかな。デイブ・バン・ロンクやピート・シーガーとか。
——楽器の演奏とソングライティングはどうやって学んだんですか?またどちらのほうが好きなんでしょう?
シャンタヌ:ギターの演奏はYouTubeで勉強したんだ。プレイしたい曲を検索して、彼らの演奏をみながらマネをした。僕にとっては、ソングライティングこそやりたいこと。ギターの達人になりたいとは思っていないし、思ったこともない。コードを覚えるたびに、合わせて歌って曲にするということを繰り返してきた。
——自分自身を歌で表現することについて、バンドとソロで違いはありますか?
シャンタヌ:バンドでの曲は集団で作るもの。みながそれぞれのパートをプレイして最終的な表現につなげる。またバンドでの曲は僕と(メンバーの)Dhruv Bholaの2人で書く。ただソロの場合は、当然僕しかいない。もっとパーソナルで直感的に曲を作ることができる。
——現在よく聴いているアーティストを教えてください。
シャンタヌ:今だとローファイのインディーロックやニューヨークのベッドルームポップのアーティストの曲をよく聴いている。たとえばLVL UPやPorches、Frankie Cosmos、Attic Abasement、Girlpoolなんかだ。
——インドのインディーシーンの存在は、まだ海外では広く知られていません。今現地で何が起きているか説明してもらえますか?
シャンタヌ:インドのインディーシーンは毎日のように成長しているよ!常に膨大な量の曲がリリースされていて、それぞれの都市には良いバンドやアーティストがいるんだ。5年前くらいは、欧米のバンドの焼き直しみたいな曲が多かったかもしれないけど、今では徐々に自分たち自身のサウンドを築き始めている。今後はそれぞれの都市ごとに独自のシーンが出来て、バンド同士のつながりも強くなっていけば良いなと思う。
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