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1997年に結成したデリー出身のエレクトロニックデュオMidival Punditzは、インディーミュージックシーンの中でも最古参の一人。生き残りが難しいといわれるこの業界インドの中で、18年もの間最前線を走り続けている。

シンセサイザーやドラムマシーンといった機材と共に、タブラやサーランギー、ドール、トゥンビ、サロード、サントゥールなどの様々な伝統楽器を組み合わせた楽曲を展開。まさにインドに生まれ伝統音楽を聴いて育った人間が、西洋のエレクトロニカをやったらこうなった、というような作品になっている。

小さい頃から友人同士だったというガウラフ・レイナとタパン・ラジの2人によって1997年に結成。デモテープを送ったタブラ奏者・プロデューサーのタルヴィン・シンに認められたことで、活躍の場を広げていく。アジアンアンダーグラウンドを代表するアーティストの一人で、後に繰り返しコラボすることになるカーシュ・カレと出会ったのもこの頃。

2002年には、そのカレの推薦によってTabla Beat Scienceのアメリカツアーに同行。ツアーの一員だったザキール・フセインをはじめ、錚々たるメンバーたちと共演する幸運にも恵まれた。

それ以来インドのエレクトロミュージックシーンのパイオニアとして活躍を続けている彼らが、6年ぶりの新作アルバムとなる”Light”を4月にリリース。今回はこのアルバムのリリースに際して出された彼らのインタビュー記事をお届け。メンバーの一人レイナが、インドの音楽シーンで長年活躍してこれた秘訣を語っています。

参照元は、The Daily Paoというムンバイの情報メディアで4月13日に掲載された以下の記事。翻訳・転載の許可をいただいたので、日本語にして紹介します!

Midival Punditz on their new album, staying together and surviving the indie scene

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18年ものキャリアを持つMidival Punditz(ミディヴァル・パンディッツ)は、インドのインディーミュージックシーンの中で、最も息の長いアーティストの一人だ。これだけ長い間活動できていること自体が、一つの大きな達成といえる。前作”Hello Hello”をリリースした2009年から最新作”Light”を出した2015年4月までの6年間で、彼らと同じくらい長いキャリアを持つバンドの多くは、メンバーチェンジ(Indian OceanThermal and Quarter)や、活動の停止(Pentagram)といった変化を経験している。

アルバムのインターバルとして6年という期間は少し長いかもしれない。しかし(パンディッツのメンバーの)Gaurav Raina(ガウラフ・レイナ)とTapan Raj(タパン・ラジ)の2人がその間何もしていなかったわけではない。長年の盟友ともいえるドラマー兼プロデューサーのKarsh Kale(カーシュ・カレ)と共に、ボリウッド映画”Karthik Calling Karthik(2010年)や”Dum Maaro Dum”(2011年)のバックグラウンドスコアに取り組んだほか、「フランキー・ワイルドの素晴らしき世界」(2005年)のインド版リメイクとなる“Soundtrack”のサウンドトラックを手がけるなどしてきた。さらに昨年にはレイナがソロデビュー作”Grey To Silver”をGrain名義でリリースしている。パンディッツとしての最新作の”Light”によってレイナとラジは、彼らのコアとなるインドの伝統音楽やフォークミュージックを取り入れたサウンドに回帰しつつも、”Atomizer”のような爆発力のあるトラックを含んだ前作”Hello Hello”に比べ落ち着いた様子をみせている。

彼らが「ライブを念頭に置いたコンセプトレコード」と語る”Light”は、今の時代のアルバムの役割が、楽曲の試聴やコンサートの土産物となっていることを踏まえて制作されている。少なくとも当初のライブは、アルバム内の9曲の楽曲を順番通りに演奏するほか、フィルムメーカーのSantana Issarによる映像を同時に流す形になるという。目的は観客を一種の旅に連れ出すことだ。先週ジョニー・ウォーカー主催のイベント”The Step Up”での演奏のためにムンバイに滞在していたレイナは、「これは聴くためのアルバムだ。ダンスするためのアルバムではない」と語る。ジョニー・ウォーカーは、パンディッツによる国内5都市をまわるアルバムリリース記念ツアーのスポンサーも務めている。当初パンディッツは”Light”の曲を”The Step Up”のフィナーレでお披露目する予定でいたものの、イベントのセットの雰囲気とアルバムが合わなかったため見合わせたという。

何かにつけて適切な時期と場所をわきまえていることが、パンディッツが約20年もの間活動を続けられた要因の一つだ。実際彼らはクラブチューンの2曲を”Light”から外している。「ひどく場違いで悪目立ちしていたからね」(レイナ)。今作は前作に比べてゆったりとした作品ではあるものの、観客が盛り上がるポイントは数多くある。アルバムのゲストパフォーマーには、アッサム州のシンガーソングライターPaponや、「3人目のパンディッツの座をカーシュ・カレと争っている」(レイナ)というフルート奏者のAjay Prasanna、過去数年間のパンディッツのライブの常連パフォーマーとなっている歌手のMalini Awasthiなどが名を連ねる。さらに(コチ出身のロックバンド)Motherjaneの元ギタリストで、4曲目の”Rushing”でカルナーティック音楽風のリフを披露しているBaiju Dharmajan、ラジャスタン民謡風の2曲目”Baanwarey”でコラボしているシンガー兼演奏家のKutle Khanも注目。そしてアルバムの締めとなる9曲目”Don’t Let Go”は、ライブのハイライトを飾るにふさわしいアンセム的な楽曲だ。

“Light”は間違いなくパンディッツのこれまでのヒット作と同様に素晴らしい作品だ。しかし素晴らしい作品を作るだけでは、キャリアを長く続けることはできないのも事実。そこでわれわれは、パンディッツがコンビとして長く活動を続けてこられた秘訣をレイナに尋ねてみた。以下はレイナの発言の抜粋だ。

■お互いの性格をよく知ること

活動を始めた当初から、僕らは互いの長所と短所を理解していたんだ。例えばどちらかが短気だったり朝型ではなかったり、私生活で悪いことがあったりした時に、「そんなの関係ない。仕事は仕事だ」と言ってのけることは簡単だ。けれどもそうならないように、見習うべき相手の長所や、手助けしてあげるべき短所に敏感になってあげることが大事なんだ。それと僕らは子供時代から一緒に長い時間を過ごしてきたことも大きい。8年生か7年生の時に初めて会って以来の友人だからね。

■バンドは自分たちよりも大きな存在であることを忘れないこと

僕らが活動しているフィールドは、自分たちが好きなようにできる場所ではない。いまだにお互いに「これはパンディッツのあるべき姿ではない」と話すこともある。そうなったら自分たちを元の位置に戻さねばならない。これが一度出来れば、次からはどんどん慣れていくって分かってるんだ。

■一緒にいすぎないこと

互いにうんざりしないように、1日のほとんどは離れて過ごしている。とはいえ楽曲はスタジオで一緒に作るけどね。

■フルタイムで音楽に携わることは、事業運営と同じだと理解すること

ビジネス的なことをうまくやらないと、キャリアを進めることはできない。モーツァルトのように自分の部屋にこもって音楽を作り続けることもできるけれども、やっぱり外に出て何かしないといけないと思う。率直に言って、僕らは自分たちの魂を売り渡したわけじゃない。大きな収入を得ることもあるけれども、代償としてパンディッツの名を汚したことは一度もない。ビジネス的な話でいえば、今回のプロジェクト(The Step Up)をジョニー・ウォーカーと一緒にやろうと決めた理由は2つある。一つは彼らが僕らのアルバムツアーのスポンサーを引き受けてくれたこと。2つ目は(The Step Upの目的である)キッズたちをメンターするということが、僕らがこれまでやってきたことと一致するからだ。これまでにも大学でサウンドエンジニアリングを専攻した学生をスタジオで雇ったこともある。そのうち何人かは3年は働いていたよ。

■時には自分の時間をとること

(ソロプロジェクトとして)Grain名義での活動を始めた理由は、長年希望していた英語でのソングライティングに挑戦したかったからなんだ。スタジオでカーシュ・カレとシンガーのモニカ・ドグラと一緒にセッションをしていた時に、偶然目指していたサウンドを出すことができた。その時僕はこう言ったんだ。「この勢いがなくなる前に、このサウンドを追求したい。これまでのやり方から抜け出さないといけないんだ」。

■自分たちのオーディエンスを決して忘れないこと

僕らとリスナーとの間にはとても良いシナジーがある。彼らにはいつでも「これぞパンディッツの音楽」というものを届けてきつつも、一方でその境界線をすこしずつ広げてきた。自分のクリエイティビティに影響を与えないやり方で、オーディエンスをリスペクトすることがすごく重要だと思う。ファッションショーに楽曲を提供する時でさえ、自分たちが自然に良いと思えるような曲を作っている。ボリウッドへの楽曲提供は、なんでも挑戦してみたいからだ。けれどもすごく手間のかかるし、あまり報われない仕事だなということが分かった。ダンスミュージックの曲のような評価はされないしね。

※参照元
Midival Punditz on their new album, staying together and surviving the indie scene
Asian Vibrations