アーティストカタログ#032:Talal Qureshi
Talal Qureshiは、パキスタンの首都イスラマバード在住のエレクトロニックミュージックのプロデューサー。音楽に対する検閲の厳しいパキスタン国内よりも海外での知名度のほうが高く、BBCニュースやニューヨークのEast Village Radioなどは、彼について“未来のサウンド”(the sound of the future)と呼ぶ。
2007年に若干19歳でソロデビュー。自身の楽曲だけでなく、Adir Omarのデビューアルバム「The Mushroom Cloud Effect」のプロデュースやTalvin Singhのリミックスなど、そうそうたるアーティストたちとの仕事も手がけてきた。
2012年2月にリリースしたデビューEP「Equator」は、BBC AsianやBBC Radio1などのメディアから高い評価を獲得。また2013年5月にはセカンドEP「x1988」をリリース。音楽ブログのThe Music Ninjaはこのアルバムについて、「優れた楽曲を一般リスナーに知れわたる前に聴くことができたという、密かな満足感を感じた。x1988は大きなヒットになるだろう」と評している。
自身が活動するパキスタンの音楽シーンについてTalalは、「パキスタンの音楽業界の唯一の問題は、商業的なヒットにしか目がいっていないこと。オーディエンスも昔ながらのヒット曲しか求めていない」と批判する。たとえば彼があるスクールパーティーでプレイした時のこと。「一人の男が僕に近づいてきてこう言ったんだ。”もうヒット曲寄りの選曲にしたらどうだ。客はあなたの曲を楽しんでいない”。だけど客に目を向けると、彼らは盛り上がって身体をくねらせて踊っていたよ。けれども実際にジェニファー・ロペスのような曲をリクエストされることは多いね」。
「Pakistan DJ NetworkがFacebook上で活発に活動したり、国内各地でハウスのパーティーを開いたりしているけれども、本格的に根付くにはあと4〜5年はかかるだろう」と2013年時点のインタビューで話している。
パキスタンは、他の南アジアや中東の国々のように音楽に対する検閲が厳しいため、音楽の流通手段は主にソーシャルネットワークに限られる。さらに政府によってYouTubeへのアクセスが遮断されているため、インディーシーンのアーティストが自身の楽曲を広めることは簡単ではなさそう。
こちらは2013年10月リリースのシングル”Lollicops”のPV。ヒマそうにイスラマバードの市内をうろつく2人の警官の様子がコミカルに描かれている。「イスラマバードではヒマそうにしている警官をよく見かけるんだ」(ディレクターのAisha Linnea Akhtar)。楽しげでゆったりとしたレゲー調のサウンドは、イスラマバードでの生活に漂うのんびりとした雰囲気を表しているのだという。
ちなみに途中でパーティーのシーンが出てきますが、そこには女性が一人もおらず男性のみ。Talalによると「パキスタンの典型的なパーティー風景」なのだそう。
■Talal Qureshi
・Soundcloud
・Bandcamp
・YouTubeチャンネル
・Facebook
※参照情報
・Meet Islamabad’s Only Trap Star, Talal Qureshi
・Talal Qureshi: Boogie Woogie bugle boy
・User:Talalqureshi
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