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ボリウッド映画音楽に対する日本人のイメージといえば、胃がもたれそうなほど過剰なディスコサウンドに合わせて、ダンサーの大群がキレッキレのダンスを披露するというものだろう。西洋音楽に慣れきった感覚にはすごく奇異に移るので、キワモノ扱いされがちだ。しかしそこでこのジャンルに対して食わず嫌いのようになってしまうのは非常にもったいない。

なぜならボリウッド映画音楽の歴史は、才能がありつつ西洋ポップの素養もあるプロデューサーたちによって形作られてきたので、われわれの耳で聴いても格好よいと思える曲も実は多い(割合としては、しょうもないレベルの音楽のほうが圧倒的に多いのは事実だと思うけど)。

実際にボリウッド映画音楽のプロデューサーの中には、Bidduのように世界レベルでヒットソングを飛ばした者もいる。南アジアの歌姫Nazia Hassanを80年代に世界的にヒットさせてことでも有名なBidduだが、日本のアーティストとも関わりがある。キャリアの初期である1969年に、沢田研二率いるタイガースの楽曲をプロデュースしたほか、80年代には中森明菜の楽曲も手がけたりもしている。

そこで西洋音楽に慣れた耳にも格好よく聞こえるボリウッド映画ソングを年代別に紹介していきたいと思います(僕の個人的な好みの割合もデカイです)。今回は70年代のヒットソングの中から選んでみました。音楽だけで聴いても良いと思うけど、やっぱりダンサブルなボリウッド映画だけに、映像と一緒にお楽しみください(ちなみに80年代編もあります)。

1.「Dum Maro Dum」
ボリウッド映画「Hare Rama Hare Krishna」(1971)の挿入歌。歌手は女性プレイバックシンガー(映画で使われる歌を事前にレコーディングする歌手)の大御所Asha Bhosleだ。サイケロック調のこの曲は、当時の映画音楽チャートで12週連続で1位になるほどのヒットを記録した。

2. 「Cabaret Dance Music」
ヒンディー映画として初めてアフガニスタンで撮影された映画「Dharmatma」(1975)でのインスト曲。プロデューサーは70年代を中心に活躍した作曲家デュオのKalyanji-Anandjiだ。インドでキャリアを築いてきた彼らだが、70年代の彼らの曲をサンプリングしたThe Black Eyed Peasの「Don’t Phunk with My Heart」がグラミー賞を獲得(2006年)するなどしたことで、欧米でも名前が知られることになった。

3. 「Samne Yeh Kau Aaya」
映画「Jawani Diwani」(1972)は、ボリウッド映画音楽の名作曲家R.D.Burmanが手がけた楽曲群が好評を博したこともあり、1972年の年間興行収入で9位を記録した。この曲の歌い手はプレイバックシンガーや俳優として活躍したKishore Kumar。二人は50〜70年代にかけてタッグを組んで数々のフィルムソングをヒットさせてきた。

4. 「Pyar Chanhiye Keh Paisa」
1977年に公開されたサスペンススリラー「Chhaila babu」は、興行収入4000万ルピー(約7000万円)を記録した大ヒット作。音楽は作曲家デュオのLaxmikant-Pyarelalの担当。ただ今回紹介する楽曲は、セッションミュージシャンのCharanjit Singhによるインストverです。今回の紹介では割愛するけど、Charanjit Singhといえばアシッドハウスの先駆け的なアルバム“Synthesizing: Ten Ragas to a Disco Beat”が激ヤバなので、ぜひ一度聴いてみてください。

5. 「Duniya Mein Logon Ko」
Apna Desh」(1972)の挿入歌で、R.D BurmanとAsha Bhosleのデュエット曲。冒頭のBurmanの雄叫びがすごく印象的です。Burmanはボリウッド映画の作曲家として名をなした人物ですが、この曲を聴くと歌手としても素晴らしいことがわかりますね。

6. 「Kya Jane Yeh Duniya」
Toote Khilone」(1978)の挿入歌。作曲はボリウッドの名物プロデューサーのBappi Lahiriです。ただ本当は5分くらいある曲なんですけど、この動画はなぜか半分くらいで切れてしまっています。映像なしだけど、フルverは別動画で観ることができます。

7. 「Bandhan Kat Gaye」
同じく「Toote Khilone」の曲。Bappi Lahiriっぽいエレクトロなサウンドのイントロがグッドな曲です。

8. 「Tum Bhi Meri Jaan」
コメディー映画「Salaam Memsaab」で使われた曲で、作曲はR.D Burman。歌手はまたまたAsha Bhosleです。ボリウッド映画のヒットソングを漁っていると頻繁にAsha Bhosleの歌に行き着く。ホントにインドの国民的歌手なのだということを実感させられます。ちなみに彼女は2011年に、「音楽史上最もレコーディングされた歌手」としてギネス認定されました。

9. 「Yeh Mera Dil Yaar Ka Deewana Deewana Deewana」
アクション映画「Don」(1978)の挿入歌で、歌手はAsha Bhosle。この曲でBhosleはベスト女性プレイバックシンガー賞を獲得してます。ちなみに主演は、今や孫のおのろけツイートを連発して良いおじいちゃんになっている感のあるAmida Bachchanです。

10. 「Piya Tu Ab To Aaja」
Caravan」(1971)
作曲はR.D Burmanで、歌手はBhosle。この曲によってBhosleは「キャバレーソングの女王」と目されるようになったほか、80年代や2000年代になってからも新しくレコーディングし直されたりして、彼女の代表曲の一つになっています。