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このサイトはインドのインディー音楽シーンを紹介する(超絶ニッチな)ブログだ。

こういうサイトを運営しているとありがたいことに現地のアーティストと知り合う機会に恵まれることがある。

「インドの音楽シーンはこれからどんどん面白いことになる!」と自分の中で確信のようなものがあるとはいえ、一方で「誰がこんなニッチな記事を読むんだ?」というモヤモヤを抱えているのも事実。

そんな感じで日々地味に更新しているだけに、こういう目に見える反応があると本当にうれしい。

つい先日もThe Koniac Net(コニャック・ネット)というムンバイ出身の5人組オルタナバンドのボーカルと少しやり取りをした。ファッションマガジンのGQ誌など数多くのメディアに取り上げられている人気バンドだ。

なんでもボーカルのデービッド・アブラハムは大の日本好きで、将来は日本でライブを行うだけでなく、実際に住んでみたいとまでいう。

知り合ったきっかけはこんな感じだ。

先に挙げたThe Koniac Netがインド版ローリング・ストーン誌で紹介されていた。彼らが近くリリース予定の新作に関する内容だ。割と大きく取り上げられていたので、インドでは人気のバンドなのだろうと思った。

早速彼らの公式サイトにいって過去の作品を聴いてみた。とてもかっこよくて良いオルタナロックだ。しかもなんと6月には日本のラジオ番組「WhattheFunday」で曲が紹介されたという。どういった経緯で実現したかはわからないが、日本のラジオ番組でインドのインディー音楽がかけられるというのは、かなり珍しいだろう。

バンドに関する今後のアップデートを追う目的で、公式Facebookページに「いいね」をしておいた。

すると、ボーカルのデービッドからすぐさまメールが届いた。

「いったいどうやってこのバンドのことを知ったんだ?」。

インドのインディー音楽シーンというのは、まだまだ規模が小さく国内ですらファン層は限られる。市場の大半はボリウッドミュージックだ。

そんな中にいる彼にしてみれば、インド国外の、しかも非英語圏のサイトからリアクションがあったということは驚きだっただろう。

「日本で演奏することが最終目標の一つ」と話す彼は、日本について次のように話す。

「日本にはビジネスというより個人的にとても興味があるんだ。なぜか19歳のときに、日本にいきたいという強い衝動が出てきた。それから16年間ずっと同じ思いだよ。特に東京じゃなくて、地方に住んでみたいね。日本の本当の文化に触れることができそうだし、治安も良さそうだ。あくまで個人的な印象だけどね」。

ニューヨークの大学を卒業して、日本人の友人も多いという彼の文面からは、フレンドリーで知的な雰囲気が伝わって来る。

The Koniac Netによる新作をとりあげるローリング・ストーン誌

The Koniac Netによる新作をとりあげるローリング・ストーン誌

GQ誌による、The Koniac Netのフロントマン、デービッド・アブラハムへのインタビュー記事

GQ誌による、The Koniac Netのフロントマン、デービッド・アブラハムへのインタビュー記事

■思ったよりむずかしい、日本への進出

そんな彼の目標の一つは、当然のことながら自身が率いるバンドで日本でのライブを行うことだ。

しかしこれが難しい。

The Koniac NetのEPを日本の音楽関係者に届けてくれる日本人の友人や知り合いもいたが、なかなか結果につながらない。

先ほど触れた6月に日本のラジオ番組で曲がかけられたというエピソードは、そういった努力を3年間ほど続けた末の出来事だったのだ。

日本進出への難しさに、デービッドも首をかしげる。

「僕が知る限りでは、1990〜2000年代の日本はオルタナミュージックが盛んな国だったはずだ。海外のオルタナバンドのアルバムがリリースされれば、限定版や特別版が真っ先に日本でリリースされていたくらいだしね。だから日本への進出ももう少しスムーズに進むと思っていた」。

なぜこのような状況になったのか?彼らのバンドとしての実力が足りないのだろうか?

そんなことはなさそうだ。

2012年にムンバイで結成したThe Koniac Netの曲は、これまでにアメリカやイギリス、ドイツをはじめ30カ国以上のラジオ局でかけられている。2012年5月には、アメリカのインディーミュージック誌によって「Artist of the Month」にも選ばれた。

またひとたび新作を出すとなれば、ローリング・ストーン誌の取材が入るようなバンドだ。

世界各国での実績が豊富、かつフロントマンのデービッドは日本への関心がとても高い。それにもかかわらず話はなかなか前に進まない。

■洋楽の有名アーティストも苦戦

「日本は進出が最も難しい国の一つだよ」とデービッドは話す。

少し調べてみれば、同様の感想を持っているアーティストは彼だけではない。誰もが知る有名な洋楽アーティストたちも同じようなコメントを残している。

イギリス出身の大御所アーティスト、ポール・ウェラーは2011年に日本の音楽メディアのインタビューに対して、次のように答えている。

「最近の日本の洋楽ライヴは客入りが悪くなってるからなぁ、、、。他のバンド連中も『最近の日本ツアーはさっぱり客が入らなくなった。どうしたんだろう?』ってみんな言ってるし、前回の俺の来日ツアーも客入りの悪さに実はびっくりしたんだよね」。

ポール・ウェラーといえば、80年代にザ・ジャムとザ・スタイル・カウンシルといったバンドでの楽曲が日本でも根強い人気を誇り、1992年にリリースしたソロデビューアルバムにいたっては、本国イギリスよりも日本でのほうが売れたようなアーティストだ。

またカナダを代表する人気バンド、ニッケルバックもBURRN!誌の取材に対してこう嘆く。

「日本人は自分の国の中で流行っている音楽にしか興味が無い。よその国で流行っている音楽に興味が無いみたいだ」

■原因は日本の音楽シーンの”ガラパゴス化”

日本の音楽市場で洋楽が苦戦する理由として、CDやダウンロードなどの販売減がよく挙げられる。

もちろんそれもあるだろうが、音楽販売が減少しているのは日本だけではない。欧米やアジアの国々でも事情は同じだ。

この原因についてタワーレコーズ・ジャパンの元CEOキース・カフーンは、日本の音楽ビジネスの”ガラパゴス化”を指摘する。

欧米の音楽業界はインディーシーンを中心に、革新的な音楽を積極的に掘り出そうとする一方で、日本はすでに人気の出たアーティストにばかり注力する保守的な傾向があるという。

「日本では革新は敬遠される傾向にある。日本のメディアは、すでに取引のある大手レーベルが多額のプロモーション予算で展開するありきたりな音楽を求める。(中略)。優れたジャズ・ピアニストの上原ひろみでさえも、日本でブレイクしたのはアメリカで評価されてからだった」

■世界の新しい動き、ガラパゴス化の日本には入らず

別に日本のリスナーの関心が、海外のオルタナミュージックから離れているだけであれば、それ自体は悪いことではないと思う(洋楽ファンとしては残念だけど)。今のようにアイドルをはじめ国内の音楽が盛り上がれば、相対的に海外アーティストへの関心が薄れる時期もあるだろう。

けれども関心が薄れた結果、海外シーンの動きが極端に入りづらい状態になっているのだとしたら、それは問題だ。

実際に先に触れたカフーンは、「日本の音楽ビジネスは、一般的に外国人(ニューフェイス)の参入をブロックする傾向がある」とはっきり言っている。

海外の音楽事情が入ってこないことの何が問題なのか?

僕が今挙げられる点としては、今こそ海外の音楽が面白い時期なのに、業界のビジネス的な問題のせいで、内にこもることになってしまうのは、本当にもったいないということ。

ついこの間までは、海外の音楽=アメリカやイギリスなどの欧米、といった状況だったかもしれないが、今はそうではない。

インターネットの普及によって、アジアやアフリカの発展途上国のような国々でも最新の音楽事情に触れたり、自作の音楽を発信できるようになった。

その結果、欧米以外の地域からも新しいインディーシーンが同時多発的に出てくるようになった。このサイトで紹介しているインドもその一つだ。

つい先日発売されたBrutusの「太陽の音楽」特集(No.805)で、こんな文章があった。世界各地のヒップホップを紹介する文脈での言葉だが、他のジャンルについても同じことが言えそうだ。

「アメリカがポップカルチャーの絶対的中心地としての力を失いつつある現在、世界中に無数の「中心地」が生まれつつある。そして、そうしたなかで個性的で誰にも似ていない独自のヒップホップ表現が各地で編み出されている」

■世界各地の音楽シーンに目を向けよう

音楽販売の減少も問題だが、音楽の多様性が失われていることも同じくらい問題だ。

世界各地で面白いシーンが登場している今、ぜひ日本や欧米以外の音楽にも目を向けてほしいと思う。

このサイトのテーマであるインドの音楽シーンも目まぐるしく動いている最中だ。

思ったより長い記事になってしまったけど、The Koniac Netのフロントマン、デービッドの言葉で締めます。

「今のインドでは、まだボリウッドや商業的な音楽がまだ幅を利かせているんだ。だけどインディーやオルタナシーンがおかしいくらい盛り上がり始めている。オリジナルで良い音楽に対する欲求がすごい高まっているんだよ。こういった良い変化が日本でも起きるといいと思う」。

■The Koniac Net
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