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インドでの音楽ストリーミングサービスの普及が著しい。もともとインドの音楽市場は日本に次ぐアジア2位の規模をほこるが、近年のインターネットやスマートフォンの普及が同サービスの普及を後押ししている。

音楽ストリーミングサービス大手といえばスウェーデンのSpotifyだが、まだインドには参入していない。現在インドの同市場では、国内の4大大手であるSaavnGaanaWynkHungamaがしのぎを削っている状況だ。各社が国内外の中間層以上のインド人をターゲットとして、サービスを提供している。主なサービス形態は、広告が表示される無料版に加えて、広告なしでオフラインでの保存機能など付加機能がつく有料版を提供するというもの。

サービスを普及させるにあたりいくつかの問題点(ネット接続環境が悪い、クレジットカードの保有率が1%にとどまるため課金手段が限られる、海賊版の利用が蔓延している)はあるものの、ネット人口が2.5億人、モバイル端末の契約数が9億件にも上るインドの市場は国内外から注目を集めている。

今回は、インドメディアの記事に掲載されていた、2014年の音楽配信サービスのトレンドを紹介します。

1.通信キャリアによる音楽ストリーミングサービス参入

インド通信キャリア最大手のBharti Airtelが、音楽配信サービスWynkを立ち上げ、同市場への参入を果たした。月額129ルピー(約250円)で最大500曲を配信する内容。キャリアによる配信サービスというと、従来は自社の通信網でしか利用できない、利用時間に応じた従量課金制といった問題があったが、Wynkはこれらはクリアしているため評価は高いよう。純粋な配信サービス企業と違い、モバイル契約とのバンドルができるのも強みだ。

2.オフラインでの利用が可能に

国内の配信大手SaavnとHungama、Gaanaが、楽曲や動画のオフライン視聴機能を相次いで打ち出した。Hungamaの場合は、無制限で楽曲や動画を端末に保存できる。ネット環境が不安定なインドにおいて、ネットにつながっている間にまとめてダウンロードしておけることは、ユーザーにとっては非常に助かる機能だろう。

3.地域固有の音楽のラインナップが充実

Gaanaの副社長によると、テルグ語やタミル語など地方の言語による楽曲の視聴は、メインストリームであるボリウッド音楽を上回るペースで伸びているという。このような需要に対応する動きが活発になっている。たとえばイギリスのデジタル配信大手Believe Digital Studiosは、インドの地方音楽を専門とするレーベルAditya Music Indiaと提携した。これによってこの種の音楽が、iTunesやSpotifyなどを通じて世界に配信されることになる。またGaanaは2014年初め、楽曲を言語別やジャンル別で検索できるスマートフォンアプリの提供を始めている。

4.アメリカの音楽ストリーミング大手がインド大手を買収

アメリカの音楽配信大手Rdioは2014年3月、インドの音楽配信サービスDhinganaを買収した。Dhinganaは、当時SpotifyとGaanaに次ぐ3位のサービス。これによってRdioは、インドユーザーの獲得だけでなく、インドのレーベルとの交渉や、楽曲のライセンス料の水準といったインド市場でのノウハウを得ることになる。

5.Saavnがモバイル端末での音楽ストリーミングを強化
SaavnとGaanaは、13万3000曲に上る楽曲のモバイル端末上での配信権をインドのレコードレベル大手T-Seriesから取得した。これによってPCサイトだけでなく、普及が加速するスマートフォンなどのモバイル端末を通じて、これらの楽曲のストリーミング視聴が可能になる。

※参照情報
Trends in the digital music segment in 2014
IFPI Digital Music Report 2014